by ハッチョ
昔々八幡浜高校登山部だった連中が、恩師(愛称:クマさん)の定年を機に引っ張り出してちょこちょこと山遊び。
石鎚からの帰り道、瓶が森からそれぞれ車に便乗して下山。面河の食堂で昼食をとることになったがどうしても注文の数が合わない。
「誰がおらんのや。おらんやつは手をげてみい」と最初は冗談を言ってたが気がつけば恩師がいない。あわてた生徒たち自分の車にだれを乗せたか突き合わせてみると誰も恩師を乗せていないことが判明。
すわ一大事、こともあろうに恩師を1800mの山の上に置き忘れてきたらしい。
「アホカすぐ迎えに行け」最年長の長老(生徒)が自分のことは棚に上げて命令する。しかしそこはそれ昔の先輩後輩。命令系統はしっかりしている。すぐに2台の車で恩師を拾いに出発。山の上まで1時間、往復2時間「こりゃ飯もまずいや」と思っていたらものの10分位で戻ってきた。見るとその後ろにもう一台別の車がいて、その車に恩師が鎮座ましましている。
聞けば恩師は”キジ撃ち(小便)”に行って戻ったら誰も居なかったという。たまたま通りかかった知人の車(そんなにたくさんの車や人が通るわけではない。県内各地の高校で校長まで務めた恩師の顔の広さがここで役に立った)に乗せてもらい帰る途中、我々とはぐれた別のメンバー(2人)の車と出合いそちらに乗り換えて下山したとのこと。
「お前達というやつらは(なんと薄情な)」と嘆く恩師を前に、生徒たちは叱られる犬のごとくかしこまってうなだれていました。(皆もう還暦前、そう見せるだけの演技力は心得ている)
でも本当に可哀そうなのは、居ないことに誰も気づかれず、図らずも恩師を拾った2人の元生徒。途中で恩師と出会わなければ、彼らそのまま誰にも気づかれず置いてけぼりになったはず。
後日、いい加減な生徒たちの仕打ちは奥方の耳に届き、恩師に対する叱責となり、この時を境に奥方が、「殿」のお守役兼生徒たちのお目付け役として参加するようになりました。
あぁ、われらの尊敬してやまぬ恩師も妻の前ではただの「だらしないおじさん」。
生徒たちは、その境遇を淡々と受け入れている恩師をますます尊敬するようになったとさ・・・。