今更ですがやっと読みました、百田尚樹の処女作「永遠の0」
かすかに処女作らしい生硬さを感じはするものの、実に良く出来た小説で、百田尚樹氏はテレビ等で拝見するしゃべりの面白さどおり、稀代のストーリー・テラーぶりが存分に示されています。
大東亜戦争に突入した日本海軍で、「ゼロ」と恐れられた名機:零戦と「臆病者」と呼ばれた名パイロットの物語。12月に映画が公開されるそうで大いに期待しています。
ストーリーはちょっと置いといて、
この本でも強く訴えられていますが「日本軍」という組織の持っていた『狂気と鈍感(無責任)』はなぜ生まれたのでしょうか?
生身の人間を兵器の一部として消耗する。行き過ぎた全体主義、異を唱えることのできないが故に責任を問うことができない組織。
確たる理由はまだよくわかりません。ただこのことが「日本人だけ」の特殊なものだとは思えません。
そして今の社会の中にも同じような「狂気と無責任さ」が潜んでいるように思います。人間そのものの持つ宿命のようなものかもしれません。
たまたまそれが、大和の国の歴史が育んだメンタリティーと敗戦という過酷な状況で増幅され「兵器人間」というものが生まれたのかもしれません。
タイトルの「永遠の0(ゼロ)」には、そのような人間の愚かしさ、常に降り出しに戻って一から人生を積み上げ同じ過ちを繰り返す悲しみが込められているのか?
いやこの作者にかぎってそんなニヒリズムに陥ることはない。司馬遼太郎に似た底抜けの「人間讃歌」を書き続けるだろうと思わせる作品でした。
KEI
2013年7月06日 10:11 AM「輝く夜」「影法師」読了。
書評に、百田尚樹は「希望を書きたいんや」と語っているとありましたが、その点で司馬遼太郎と似ているのでしょう。
「影法師」のテーマは「永遠の0」と同じ人間(男?)の生き様を武士の世界に置き換えて描いたもの。「0」との違いは友情を一方の柱としていてなぜかヘルマン・ヘッセを思い出しました。
「輝く夜」、すべて女性を主人公にクリスマス・イブの夜に起きる奇跡の物語の短編集。これは司馬遼太郎にないファンタジー。
どちらも一気に読んでしまいました。
百田氏は作家ながらやはり関西人。
読者に徹底的に喜んでもらわなければあかん、というサービス精神が溢れ出していました。