by KOU
小学生の頃、修学旅行の出発時間に間に合わなくなりそうになった時。
突然身長150センチに満たない小柄な母が大きな父親の自転車を引っ張り出した。
私に「後ろに乗りなさい」と命令し、誰もいない早朝の町を走りぬけ駅まで送ってくれたことがある。
不思議なことに、それ以外母が自転車に乗っている姿を見た記憶が全くない。
頭が良くて優しい一途な母に、私は今でもひそかに思っている。
”あの時母は、自分が自転車に乗れない事を忘れていたのではないだろうか”
それが本当であってもおかしくない、そう思わせるほど懸命に優しい母でした。