ドロー(3)

by ハッチョ

ニーノが彼のテーブルに行き腰を掛けて話し始めた。

残された私とトッチャンは小さな声で、
「何やあれ?」
「ニーノのオッチャンも妙な物持っとるな」
「夜店で買うたんとちゃうか?」

二人はビールを舐めながら横目で成り行きを見守っている。
ついにニーノが例の物を取出した。何を話しているかは判らない。
どうせ英語だから隣のテーブルにいても判らない。

やおらニーノは、ポーカーゲームで勝ちを確信したギャンブラーが自分の手札を見せる時のように、
ゆっくりと彼の前に自分の階級証を開けて置いた。

その途端、相手は”ギャッ”といって立ち上がりニーノに敬礼する、
ことを我々はホンの少しだけ期待していた。

ニーノの手札を見た相手は、立ち上がった。
しかし立ち上がるには立ち上がったが不敵な笑みを浮かべている。
何か変だ。
そして、おもむろにズボンの後ろポケットから札入れを取り出した。
ゆっくりと座りなおして札入れの中の自分の手札を開帳した。

なんと彼も同じような階級証を持っていたのだ。

一瞬ニーノの動きが止まる。
私とトッチャンは噴きだしそうになったビールを懸命にこらえた。(続く)

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