by もう老年
ついこの間、ほんの半月前まで
まるで秋らしくなかったのに
急に寒くなった今年、
ふと気がつけば
金木犀の
あの甘やかな香りに
つつまれた記憶がない。
もの心ついた頃から
「私は、他の誰よりも
木犀の香りを愛している」
心秘かにそう思っていた。
しかし今年、そんな私を置き去りにして
一瞥もくれず季節は私のそばを通り過ぎたのだ。
実に気前よく
当たり前のように与えられていたものを、
ある時を境に前触れもなく奪ってしまう。
残酷な、あまりにも残酷な仕打ちではないか。
秋の日の終わりに、諦めるしか術はない私よ
ああ、もう風の声に耳を傾けるのはよそう。
静に静に落日を待つのだ。
まだ青年
2011年5月16日 4:16 PMこの世に生を授かっただけで儲けものなのに、「もう老年」にもなって益々お盛んなようにお見受けします。
こんなエッセイが書ける「もう老年」さんはよほど幸せな人生を送って来られたようで、出来る事ならば私もあやかりたいものです。