中国人ジャン・ジャンクー氏は『長江哀歌』でベネチア国際映画祭の金獅子賞を得た世界的に高名な映画監督。
現代中国のひずみを描いて世界的評価を得ているが、今回、日中合作映画『罪の手ざわり』が完成させて来日。
この方の映画を見たこともないので映画についてはなんのコメントもできませんが、日本での発言にちょっと違和感がある。
と言っても別に日中関係や歴史認識についてではない。
「中国の歴史の中には、文化大革命など悪いことは社会のせいにして人間の本質にふたをしてきたところがある。でも社会だけが責任を負うものではない。一人一人が考えるべきものだと思うんです」
前後の発言もあるだろうし、これが正確な訳かどうかもわからないので何とも言えないが、私にはひどく違和感がある。
全体的に理解しにくい文面なのだが、中でも特に『文化大革命など悪いことは社会のせいにして』? この部分に違和感を感じる。
『文化大革命』は民衆が起こしたの?中国人にとって『社会』とはなんなのだろ?
日本人なら『社会』とは自分が属する国家・民族の総体を指すから、こんなにはっきりと『社会のせいにして』とは言い切れないだろう。
ジャンクー監督の『社会』を例えば『政府』に置き換えれば日本人にはわかり易い。
そしてジャンクー監督(44)世代にとって『文化大革命』はもうすでに『一般大衆がおこした革命』と認識されているということらしい。
映画監督なら中国では相当ハイレベルな知識人だと思うが、その人にしてこのような認識では日本人と会話で理解し合うのは大変だ。
これは決して一方的に非難しようというのではない。
日本語と中国語で『社会』の意味が違うということ。仕方がないのだが『文字』が同じだから余計コミュニケーションで間違いを起こしやすい。
『文化大革命』(1965~10年間)が大衆革命のように扱われるのは、教育の問題以外何ものでもない。
毛沢東が内政失敗を繰り返し、数千万の餓死者を出し失脚寸前、復権のため「共産党内部に入り込んだブルジョワを排除せよ」と少年達を煽り政権を奪取した共産党内の権力闘争である。
ジャンクー監督は『文化大革命』が終了するころに生まれたはずだから、学校で教育を受ける頃には「若者が主導した共産主義復活革命」だとすっかり美化されてたんでしょうね。