by ハッチョ
相手の手札を見てニーノの動きが止まった。 ニーノの顔は良く見えないが相手の顔つきからすると、 どう見ても彼の”引き分け”かそれ以上ではないのか? しかしニーノも只者ではない。動じる気配はない。 ギャッと言わない、立ち上がらない、敬礼もしない。 何事もなかったようになにやら楽しそうに話している。 ここからは私達の想像である。 どうやら二人で、微妙な優劣を競うために穏やかに談笑しているのだ。 滅多にない階級証同士の優雅な闘争の後、 ニーノが得意の英語で五分五分かそれ以上に持ち込んだのだと思う。 ニーノが立ち上がり笑顔で握手をして別れる。 トッチャンと私は何も言わない。ニーノも言わない。 そりゃあそうだ。 どちらも”ギャッといって立ち上がり敬礼する”事はなかった。 引き分け、ドローである。 つまりこのいたずらは不成立。何も起こらなかったのである。 フィリッピンのビール・サンミゲールはことのほか美味いのだが、 あの時だけはニーノには少しほろ苦い味がしていたのか・・・・・? いや、底抜け・そこのけ「ニーノ」に限ってそんなことはありえない。 こんなことでめげるタマではないのだ。痩せても彼も一匹狼の旅行者社長。 サアー!次のお楽しみと行こうじゃないか。